シャーマンキング「不完全版」についての個人的見解

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マンキン復活に伴うひとつの意見。
このたび「シャーマンキング」が読切シリーズ「シャーマンキング0-zero-」として復活、そして来春からBIGプロジェクトがスタートすると告知され、そのプロジェクトの目玉なのか一環なのかは未だ不明ですが、マンタリテに1話のみ掲載された「シャーマンキング-フラワーズ-」の連載が発表されました。
当然、喜んでる人もいれば、複雑な心境を抱いている人や、快く思っていない人もいる模様。
僕も"複雑な心境を抱いている"一人だったりします。喜んでるようにしか見えないかもしれませんが。
そんな中、ネット上で目に留まった言葉。


シャーマンキング完全版」は「不完全版」になった。


これについては、同意する意見が多数を占めている気がします。事実、連載時には打ち切りという結果で終わった作品を、全編描き下ろしの真・完結編を掲載し、"完全版"と称した形で刊行し、終わりを迎えたにも関わらず、今こうして過去編である"0"や、続編である"フラワーズ"を始めているわけですから。
ですが、どうにもこの物言いには個人的には納得しかねるというか、何だかなーという気分になってしまうのです。
そんなわけで、僕個人としての「シャーマンキング不完全版」についての考えを書き連ねてみます。

  • 「完全版」という言葉

そもそも、漫画作品の「完全版」ってかなり定義が曖昧な気がします。何を持って完全としているのか。シャーマンキングの完全版は、以下の通りの仕様となっていました。

・憑依装丁
プラスティックカバー+表紙イラストでオーバーソウルを再現
・完結編
380ページを超える描き下ろしで連載時に描ききれなかった結末が明らかに
・人魂アイコン
裏表紙に持霊の人魂形態、新規デザインもあり
・キャラクター設定集
正式名称「原色魂図鑑」当初の予定数を大幅に超えるフルカラー描き下ろし、解説文はそれだけで一つのストーリー性が高い
・背表紙画
27巻連なって一つとなる連続画。後にリミックス特典としてポストカード化
・ワールドツアー
巻頭カラーで登場人物達と世界各地の名所めぐり。実写+イラストの融合度の高さに脱帽

公式で掲載されているこの6つの他、

武井宏之先生インタビュー
初版のみ封入のラストワーヅ掲載。裏話満載
・股旅日和
初版のみ封入のラストワーヅ掲載。ワールドツアー同様の実写+イラストの美麗写真(こちらは武井先生がご自身で撮影)にマタムネのイラストを添えた、キャラクターごとの詩
・人魂ピンズ
応募者全員サービス。全3回で、対象の書籍1冊買えば応募できるサービス精神も
・帯のアオリ文
表紙キャラクターの心情(信条)を端的に表す見事なフレーズ多数
・カラー掲載
単行本収録時にモノクロ化されていたページを雑誌掲載時のカラーイラストで掲載
・再連載
真・完結編だけでなく、既存の漫画本編も大幅な描き直し+文章変更

この辺も、完全版の見どころとして挙げられると思います。
一方で、以前の単行本に掲載されていたものの、完全版で未収録になったものもあります。

・JC版単行本の表紙イラスト
・折り返し著者コメント
・目次イラスト(武井先生は毎巻描き下ろしていました)
・各話の間に挟まれるキャラクタープロフィール+アイテムプロフィール
・雑誌掲載時の作品特集記事(マンキンではアメリカ編スタート時のものが数回掲載)

こんなところでしょうか。
こういった未収録部分こそありますが、基本的に"完全版"と称されるものの共通点としては

・憑依装丁
…とはいかないまでも、表紙を新規描き下ろし
・カラー掲載
単行本収録時にモノクロ化されていたページを雑誌掲載時のカラーイラストで掲載

最低限、この二つは守られている気がします。あとは、本のサイズがデカいとか。
結局のところ、完全版といいつつも、以前刊行された単行本の要素をすべて収録しきっているわけではないのですよね。どの辺りまで載せて「完全」と呼ぶかは、作品によってかなりの差があるように思います。

「完全版」の定義についての話は、こちらのサイト様の記事が様々な例を出して詳しく解説されています。
2011-06-21

  • 「0」「フラワーズ」は別作品?

シャーマンキング完全版」を「不完全版」ではないとする場合、この考え方が当てはまると思います。
シャーマンキング0-zero-」と「シャーマンキング-フラワーズ-」は「シャーマンキング(この場合は"無印")」からの派生作品であり、「シャーマンキング(無印)」とは別個のものという考えです。つまりは、「完全版」はあくまで「シャーマンキング(無印)」の完全版であるということ。
強引な発想ではありますが、「0」と「フラワーズ」は第×章とか、○○編とかそういう分け方ではなく、作品名自体が変わっているので、この理論を用いるのも可能だと思います。
…まあ実際にはそうも言えないのですが。詳しくは後述。

以前twitterでつぶやいたネタなのですが、「シャーマンキング0を完全版0巻として出せば丸く収まるんじゃね?」という考え。現状では葉、蓮のストーリーが明かされましたが、タイトルの0が示すようにいずれも過去の話。ならば1巻の前、0巻としても成立するのでは?と思いました。
まあこれで解決(?)するのは「0」のみで、「フラワーズ」はやはり前述のように別個の作品と見なすしかない感じになりますが…。

  • 続編への期待と不満

「0とフラワーズを別作品と考えれば完全版と言えるのでは?」と書きましたが、実際にはそうは言えません。リミックス版があるからです。
今年4月から刊行がスタートされたジャンプリミックス版。身もふたもない言い方をすれば廉価版コミックス。完全版をモノクロ収録でポストカード付属ですが、1番の魅力は何と言っても描き下ろし短編。毎巻新規描き下ろしのエピソードが収録されていました。ユーストリームニコニコ動画をネタにし、公式掲示板で話のリクエストを募るといった双方向的な試みもあり、数ページとはいえ、毎巻楽しめました。
「不完全版」という言葉が最初に出てきたのは、この頃だったと思います。描き下ろしエピソードが収録されることが決まったわけですし。ですが、この頃はそんな意見も少なく、純粋に描き下ろしを喜んでいる声が大きかった気がします。
今になってマイナス方向の意見が大きいのは、やはり続編が出ることへの不満からなのではないかと思います。リミックストラックは、数ページの番外編的な内容でしたが、続編となるとそうもいきません。新しいシリーズがスタートするわけですから。
僕自身、フラワーズの連載決定は、嬉しいと同時に複雑な思いもあります。あのお話は「ミカンで終わった」ことを含めての作品だったと思うので。連載になるのはもちろん嬉しいのですが、未完結で終わったからこその良さもあったなー…なんて考えてしまったり。
違う考えもあると思いますが、そういった不満等からマイナスな意味での「不完全版」という言葉が使われているのではないかと思います。

  • 元々「不完全版」だった?

そもそも、「シャーマンキング完全版」がどういう形で終わりを迎えたか。
「完全版」の最後の1冊は27巻…ではなく、公式ガイドブックである「マンタリテ」でした。マンタリテがどのような形で終わったかは先ほども書きましたが

ミカンです。

ものの見事にミカンです!

フラワーズの第1話で終了したマンタリテ。つまり「完全版」と言いつつも、良く考えたら「未完」で終わっていました。「完全版」という言葉を「物語の最初から完結までを収録した本」という定義で考えるなら、未完で〆ていた「シャーマンキング完全版」は、リミックスや、0や、フラワーズが出るまでもなく、最初から「不完全版」だったと言える気もします。
まあ先ほど述べたように、僕は「フラワーズ」は「ミカンで終わったからこその良さがある」と考えているので、ミカンを含めての完全版とも言えますし、他にもそう考えてる人がいたからこそ、これまで「完全版」が「完全版」であることに疑問を持つ人がいなかったんだと思いますけれど。

色々と考えてゴチャゴチャ書いてきましたが、結局のところ武井先生の作品は、どの作品も「終わっても終わってない」という印象があります。なので、そもそも「完全」なんてない気がします。散々語っといてこんなオチも難ですが。
ただそれでも、僕は「シャーマンキング完全版」はやっぱり「完全版」だと思っています。読んでいた当時の完全版への満足度は言うまでもありませんし、あのファンサービスは「完全」だったと、疑う余地もなかったと思うからです。
続編が始まることへの不満から「不完全版」とマイナスな意味で呼ぶのはいいと思いますが、完全版が出たときの喜びを否定するような物言いには、やっぱり違和感があります。


余談ですが、「シャーマンキング0-zero-」を完全版0巻で出すというのは、ネタで言いましたが結構本気で期待しています。だって完全版仕様で出るってことは原色魂図鑑が載るってことですよ。
スズねえさんのフルネームが明かされるかもしれないし、若い頃の道珍じいさんや、今後のゼロストーリー次第では様々なキャラの新しい一面が、描き下ろしイラストと御上裕真先生の文章で明かされる訳ですからね…!
それと、「そもそも完全版は元から不完全版だったのでは?」という趣旨の文章を書きましたが、実は「ふんばりの詩」で、完全版にすら収録されなかったエピソードが存在しています。赤マルジャンプで「8ミリシネマパラダイス」の次に掲載された「九度目正月」―――。年明けに、このエピソードについての記事を書きたいと思っています。正月ですし。

では来年の武井先生の活躍に期待しつつ、皆様よいお年を!


シャーマンキング 完全版 1 (1) (ジャンプコミックス)

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ジャンプ改 VOL.6 2012年 1/10号 [雑誌]

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