「ネヴァードロップ」(著:田原弘毅) 感想

http://images-jp.amazon.com/images/P/4062116030.09.MZZZZZZZ.jpg
劇場には全てがある!

田原弘毅さんの小説、「ネヴァードロップ」の感想?です。作者の「田原弘毅」さんは絶望リスナーにはお馴染みの「構成T」の本名です。要するに、構成Tが昔書いた小説ってことになります。
感想と言うよりも、この本がどんな小説なのかの紹介みたいになると思います。

「ネヴァードロップ」というタイトル

表紙のタイトルの下に小さく「Kunitachi Theater's Curtain Never Drops Down」と書かれており、これがタイトルの由来になっています。日本語訳で「クニタチ劇場の幕は決して降りることはない」。本編にも書かれていた言葉です。
「クニタチ劇場」とは本作の舞台となる劇場のこと。この作品ではこの劇場とこの劇場がある街での出来事が綴られています。

内容

「クニタチ劇場」で約50年間に渡って上演される「イザベラ受難」という演劇、その舞台裏での人間関係や舞台によって動かされる街の様子、出演者の苦悩や喜びや悲しみなどを、それぞれの登場人物の視点、もしくはその様子を客観的に見た視点など、いろんな角度から描いた作品です。

構成

3部構成で、それぞれの章で焦点を変えて話が進行します。また、文章が始まるときの記号によって文体が変わります。たとえば「★」から始まる文章は主人公の一人、「マリオ」が語り部で、彼視点での物語。「○」から始まるのが雑誌の掲載された演劇の感想、評価(作中に登場する架空の雑誌)。「●」から始まるのが、「クニタチ劇場」が作られてから崩壊するまでの様子を「作中で出版された本」という体で語る文章(歴史の教科書みたいな感じ?)。
最初はちょっと混乱しましたが、慣れればスラスラと読めました。あくまでその「焦点」にそったストーリー展開をするので時系列は章や記号ごとにバラバラなのですが、それも読んでいけばちゃんと考えて構成されたものだということがわかります。読み進めていくと「あれがここにつながるのか!」とか、「この人物はあの人物だったのか!」というような驚きもあり、読んでてとても楽しめました。それでも「ちょっと時間の推移がわかりづらいな。最後に年表とかあったらわかりやすいのに。」と思ってたら、マジで最後に年表が付いてました。さすが構成T。

世界観

一応、現代です。ただし、現代から始まり、未来へと続いていきます。この本が出版されたのが2001年で、この小説でのスタートは2002年、そして最後は2050年代まで続いていきます。パラレルワールドみたいなものですかね。
ただ、決して現実と同じような世界観ではありません。人外とか出てきますし、現実では絶対ありえないような現象とか起きてるので。

注意点

過激な描写が結構あります。グロテスクな意味でも、性的な意味でも。18禁まではいかなくても、15禁くらい?少なくとも小学生は読んじゃダメだと思います(小学生時代の僕が読んだら、多分内容半分も理解できないと思う)。

総評

とても面白かったです。最初は「構成Tの書いた小説」ってだけで興味を持っていたのですが、それとは別に純粋に「この作者の他の小説も読んでみたい」という気分になりました。
「演劇」も見たくなりました。自分、演劇は「吉本新喜劇」くらいしか見てないので…。
調べてみると構成Tって演劇の脚本も結構やってるみたいなので(というか、そっちが本職らしいです)もし今度構成T脚本の舞台とかあったら見に行きたいな。