ユンボル-JUMBOR- 読切版について

ついに再建された「重機人間ユンボル」。300年後の世界で目を覚ましたバルが新たな工事を始める!
・・・と、連載版から随分と時代が経ってからのお話。設定等に関しても興味深い点が多く、今回は「読切版は連載版と同じ世界」という前提で考察してみたいと思います。

  • 設定変更?

恐らく、連載版ファンの方が一番驚いたのがこの部分だと思われます。

増えすぎた人間を一掃し世界を更地に変えるため 一人の頭のおかしい王様が作り出した無人の重機
OGRE
そのOGREに対抗するため もう一人の頭の形のおかしい科学者が作り出した重機人間
JUMBOR

「頭のおかしい王様」とはゲンバー大王、「頭の形のおかしい科学者」とはドカルト博士のこと。ではここで、連載版における二人の目的を振り返ってみましょう。

・ゲンバー大王
「ユデンの園」の封印を解き、そのエネルギーで世界を救う
・ドカルト博士
「ユデンの園」の秘密を暴く。そのため、「ユデンの園」での環境に耐えうる存在としてユンボルを開発。

連載版と読切版との違いは一目瞭然ですね。ゲンバー大王は連載版では世界を救おうとしていたのに対し、読切版では人間を滅ぼそうとしています。そして、ユンボルは「ユデンの園」解放のためではなく、ゲンバー大王が作り出したOGREに対抗するためのものとして開発されています。そもそも、連載ではゲンバー大王自身がユンボルな訳で。
では、ここから考察していきます。僕自身の想像や妄想が多々含まれていますので、ご了承ください

  • 歴史が歪んで伝わった?

昔の出来事が間違った形で伝わるというのは、よくある話です。伝承として伝えられていた過去の出来事が、実際とは全然違う内容だったり。科学が発達し、記録技術が進歩している時代ならともかく、文明が未発達な時代にはそういったことがままあります。つまり、連載版のドカルトやゲンバーの行動が「間違った形で伝わった」という説です。
・・・ですが、これは違うと思われます。というのも、スパナがユンボルについて語った直後のバルのセリフ。

そういうこと

バルは、スパナが語ったおとぎ話を「肯定」したのです。つまり、少なからずそういった出来ごとがあり、バルの目的がOGREを倒すこと、というのも事実だということになります。

  • ゲンバー大王は偽物?

さらに考察を続けます。考察という名の妄想に近いのですが。連載版のゲンバー大王の目的は世界を救うこと、それはさっきも話しました。しかし、ゲンバー大王はその夢半ばで働くのをやめてしまいます(連載版最終話)。ここで彼が完全に死んだのならば、それまでの話なのですが・・・何者かが、彼をよみがえらせたとしたら?
無理な話ではありません。彼は重機人間。重機人間がどのような構造なのかは詳しくわかりませんが、ユンボル開発を手掛けている科学者なら、復活させることも出来るのではないでしょうか。活動を停止した工場を、機器の交換や修理、清掃によって、再び稼働させるように。もしくは、クローンによって再生することも可能だと思われます。
さらに、ドカルトがクレンとバイスにそうさせていたように、ユンボルは開発者の手によって、ある程度行動を設定できるようです。ならば、ゲンバー大王を自分の思うままに洗脳、操作することも・・・。
つまり、ゲンバー大王を傀儡として操っていた黒幕がいたのではないかという説です。
こう考えると、OGREを開発し、人間を滅ぼそうとしていたのは、ゲンバーを操っていた黒幕ということになり、ゲンバー大王の設定が連載版と違うことにも説明がつきます。

  • 「ユデンの園」から「VS.OGRE」へ目的がシフト?

では次に、ユンボルの存在理由がOGREへの対抗となっていることについて。まず、ユンボルの本来の目的が「ユデンの園」であることは話しましたが・・・そもそもこれ、人々にはまったく知られてないことなんですよね。
「ユデンの園」は地図にすら表記されておらず、それこそ「おとぎ話」のような存在。連載版では、ストーリー中でバル自身ですら、ユンボルの目的がユデンであることは知りませんでした。最終回の10歳時の時点ではどうかわかりませんが。つまり、ユンボルの本来の目的が「ユデンの園」であることが、最後まで人々には知られていない可能性が高いのです。
まぁ、ユンボルがユデンのエネルギーを解放して、「俺たちが世界を救ったぜ!」とか宣言してたら話は別ですが、読切版の描写的に、最終的に「ユデンの園」がどうなったのかは不明ですし。少なくとも大工事時代は終結を迎えたようですが、スクリオの状況だけでは、世界がどうなってるかはいまいちわかりません。気になるセリフはあるのですが・・・。
話がそれましたね、本題に移ります。ゲンバー大王(傀儡)がOGREを開発、人間一掃のため、世界へ放ちます。そりゃ、人々はみな騒ぎますわな。
そして、それを阻止するため、重機人間が現れ、OGREと戦います。そりゃ、人々はみな騒ぎますわな。
ユンボル達がユデンを目指している最中、もしくは、ユデンへ到達した後、OGREが現れたとしたら・・・当然、ユデンよりもOGREを重視するでしょう。未来の資源より、目先の危機を優先するはずです。バルが親方ならなおさら。これによって、「ユデンの園」という本来の目的は知られず、ユンボルは「OGREに対抗するために作られた」という解釈が生まれたのではないでしょうか。それこそ、先ほど可能性として挙げ、否定した、「歴史が歪んで伝わる」という形で。

  • ユデンの園はどうなった?

先程触れた、「ユデンの園」。最終的にどうなったのでしょう?ユンボル達はユデンへ挑み、そして、どのような結末を迎えたのか。
こればかりは、武井先生の仰っていた「前作のシリーズの続き」がなければ分からないことなのですが・・・。
推測(妄想)スタート。バルが「オレの工事はとうの昔にもう終わった」と言っていたことから、すでに決着はついているようです。もっとも、後の「オレの工事はまだ終わっちゃいなかった」から考えると、これは「OGRE」のことを言ってるのでしょうが、ユンボルの目的が「OGRE」に完全にシフトしているということは、ユデンに関してはすでに何らかの決着がついていると考えた方がいいでしょう。
1.ユデンの園へ挑む前にOGRE登場
2.ユデンの園へ挑んでいた際にOGRE登場
3.ユデンの園に関して何らかの決着がついた後にOGRE登場
1,2の場合はOGREを殲滅してから再びユデンへ挑むでしょうし、3の場合はそのまま、OGREがユンボルにとっての最後の工事となります。
読切版での世界観を見たところ、少なくとも300年前に比べれば世界は豊かで、情勢も安定しているように見えます。

人々は確かな力を隅へ追いやり 幻の価値ばかりを追いかけるようになってしまった

スパナのセリフも気になりますし。もしかしたら、「ユデンの園」のエネルギーが解放され、世界を安定させたのかも知れません。ただ、先程も述べたように、その場合、それがユンボルによるものだとは伝わってないと思われますが。

  • 〔JUMBOR11D〕 → 〔JUMBOR11〕

ゲンバー大王が連載版とは別物という説を話しましたが、バルが連載時とは別物の可能性も高いと思われます。理由として大きいのが、まず、ユンボルホーンの製造番号から「D」が無くなっているということ。ユンボルホーンのナンバーは大きく見せているシーンがあることから、武井先生もこの変更を大きく見せようとしているのがわかります。また、バルは自身を「OGREに対抗するためのユンボル」その"末裔"だと名乗っています。つまり、連載時のバルとは違う存在ということでしょう。姿形がバルそのものであることから、クローンという可能性が高いのでしょうか?いろいろと想像を巡らせてみます。

ゲンバー大王の復活説を先程話しましたが、クローンで復活していた場合、あのサイズまで成長するにはかなりの時間を要するはずです。また、改造・修理等によってよみがえったとしても、場合によっては長い期間が必要な可能性があります。つまり、連載版のラストからかなりの年月が経過した後、ゲンバーがOGREを世界に放ち、それに対抗するために再び重機人間を作りだしたのではないか、ということです。
また、この場合、新たに作り出された重機人間は大幅な改造が行われたのではないかと思います。というより、大幅な改造をするために、クローンによってゼロから作り直したのではないでしょうか。読切中のバルを思い返してみましょう。最早アレ、重機人間というよりは機巧童子ですよ。連載版では重力をコントロールする機能を有しているだけだったカウンタビまでもが、大幅に変形しています。ジェット噴射までついて、宙に浮いてますし。つまり、こうした大幅な改造を施すために、バルは連載最終話から年月が経ち、歳を重ねていく途中で、クローンから開発し直され、また子供からやり直すことになったのではないかと。容姿が10代のままなのは、そうした理由からではないでしょうか。

  • 「スクリオ」について

今回の読切の舞台となっているスクリオですが、これはどの辺に位置する町なのでしょうか?単行本の地図を見渡したのですが、「スクリオ」という地名は見当たらず・・・。僕の探し方が悪かっただけの可能性もありますが・・・見つけた方がいたら、コメント等で教えていただけると嬉しいです。
とりあえず、スクリオが3007年度版地図に載っていないという体で考えます。スパナ達がバルについて話すシーン、恐らく市役所の部屋あたりでしょうか。写真や賞状が飾ってあるのですが・・・そこには、ドヴォークの紋章が。また、中年バルらしき人物が映った写真もあります。バルが眠っていたことからも、ここはかつてのドヴォーク領のどこかと考えるのが自然でしょうか。また、スクリオは炭鉱の町と呼ばれています。連載版で物語が始まった地、「バーラック」も炭鉱の町でした。もしかすると・・・?

  • 「OGRE」について

人間を滅ぼすために作られた、無人重機「OGRE」。これだけ書くと、「ゼロクロイツ」に登場する「鉄身の巨人」*1を連想せずにはいられない僕です。もしくはゾイド
このOGRE、先ほどの説のようにゲンバー大王をよみがえらせた者が作ったとすれば、かなりの脅威だと思うのですよ。ユンボルを開発する技術を持った人間が開発したということは、対ユンボル戦も想定しているはず。一筋縄ではいかないレベルのものだと思うのです。・・・もっとも、作中でバルがあっさり「MUD BULL」を倒しているのを見ると、そうでもないような気もしますが。まぁ、もしOGREがそれだけの実力を持っていたとしたら、ユンボルをクローンから開発し直し、改造したのも説明がつくように思えるのです。
余談ですが、「無人」で自立行動を行い、「怒り」といった感情があるような描写がされていることから、人工知能のようなものが積んであるように思えます。その場合、デンシン出身の技術者が関わっている可能性が高そうです。


長くなりましたが、僕の今回の読切に対する考察はこんな感じです。あくまで僕の妄想ですので、話半分くらいで読んでいただければ幸いかと。
「連載とはパラレル」と言ってしまってはそれまでなのですけどね。実際、武井先生半公認のtwitterにて、こんなことが書かれています。

読み切りの内容ですが、今回は週刊連載時のユンボルとは同じようですこし違う、いわばパラレルワールドでのお話です。

http://twitter.com/take_pro

しかし、こうも書かれています。

今回の舞台はWORLD XAND 3339 鉱山の町・スクリオ。ゲンバー大王との戦いから時は流れ、その先にあるかもしれないひとつの未来のお話です。

http://twitter.com/take_pro

つまり、パラレルと言っても、連載版と完全に別物という訳ではなく、連載版のその未来にある、一つの世界、という解釈も可能ということです。つまり、いくらでも想像の余地はあるわけです。
今回の読切を契機に、連載版の続きをどこかで読めるのを期待したいと思います。

重機人間ユンボル (ジャンプコミックス)

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ウルトラジャンプ 2009年 11月号 [雑誌]

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*1:マテリアル・パズル ゼロクロイツ」に登場する敵。正式名称は「ロボット」。人間を滅ぼすために行動している。